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diary

評論家の1年

 年の瀬も押し詰まってきました。私が評論家生活をスタートさせた2008年も終わろうとしています。

 今年はこれまでのグラウンドからとは違う目線で、国内、そして国外でさまざまな試合を見てきました。春先のキャンプ巡りから始まり、リーグ戦、さらに交流戦、北京五輪前には韓国代表やキューバ代表の練習試合も視察してきました。北京五輪、そして日本シリーズと印象深い試合も何試合かありました。その中で特に一つを挙げるなら、やはりワールドシリーズでしょうね。メジャーリーグは普段解説していましたが、ワールドシリーズは通常のリーグ戦の1試合とは次元が違いました。打球の速さだけではなく、日本が高いとされてきた細かな技術も驚くほど高かったです。

 例えば投手はクイック投法が遅いというイメージがあったのですが、実はけん制の時のターンの素早さなどのテクニックは相当にレベルが高いものでした。来春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本代表候補には片岡(西武)ら俊足選手を加え、機動力は日本の武器と思われていますが、そう簡単に塁を盗むことはできないと思っています。
 これまで多くの選手がアメリカに行き、活躍するようになってメジャーとの差は縮まったと言われ、私も漠然とそう思っていました。しかし、リーグ戦での1試合ならそうは言えてもメジャーで最高峰の試合を見ると、一概に縮まったとは言えないことがよく分かりました。WBCではそんなレベルにある米国やドミニカ共和国と戦う可能性があるのです。

 ただ過剰に怖れる必要はないと思っています。今は情報も少なくありません。実際に日本代表選手が対戦した選手もいることでしょう。私も実際にメジャーで最高の舞台を見たことがWBCのどこかで生きてくるかもしれません。2009年は皆さんに喜んで頂けるような1年にすることを誓って、今年のホームページの締めくくりにしようと思います。

 それでは皆さん、良いお年をお迎え下さい!来年もまたこちらでお会いしましょう!

diary2008/12/27

ハートも最強布陣

 先日、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の第1次候補選手が発表されました。原監督が話されていたように、戦力的には現段階で最強の顔触れです。そして、たとえ控えでベンチにいてもグラウンドで戦っている選手と同じような気持ちで戦える選手ばかりで、ハートという点でもベストメンバーだと思っています。  各選手は我々コーチ陣がとやかく言うレベルではありません。それぞれが十分に自覚しているとは思いますが、2連覇への第一関門はいかにコンディションを整えるかです。来年2月には間に合うという想定のもとですが、中には故障を抱えている選手もいますから。とにかくベストな状態で集合日に来てくれることを祈るだけです。
 個人的には岸孝之投手(西武)のことがやや気掛かりです。日本シリーズではあれだけの快投を見せました。本人が気付かないところで、肉体の消耗は相当なものがあると思います。昨年と違ってオフもイベントや取材に引っ張りだこで、体のケアに充てる時間は不足している可能性もあります。今の時期は来年につなげる基礎体力をつくっていかないといけないだけに、上手に過ごしていることを願わずにはいられません。チームを日本一に導いた抜群のスタミナ、そしてカーブ…、岸の右腕に懸かる期待は小さくないので、本当にベストな状態で来てほしいものですね。
 北京五輪では直前にけが人が続出しました。大会を通じてもチームとしてベストコンディションは保てなかったように映りました。WBCでは同じ轍は踏まないよう、私も選手の体調面には細心の注意を払っていきたいと思っています。

diary2008/12/17

いばらの道のロッテ拒否

 長野久義外野手が2年前の日本ハムに続き、今回もドラフト指名を受けたロッテ入団を拒否しました。巨人を希望していることが一番の理由だそうです。ひと昔前ならこれほどの強い巨人志向も理解できますが、昨今では珍しいことでしょう。
 初志を貫徹する姿勢は認められるのですが、それはいばらの道であると思います。日大からプロにすんなりと入っていたら来季はもう3年目です。仮に来年のドラフトで巨人入りの希望がかなっても3年間はプロでプレーする機会を逸しました。高校生ならともかく、長野の年齢を考えると、極めて貴重な時間です。1年後にプロに入ってくる時には、それこそばりばりの即戦力という高いハードルが求められます。
 そして真実はどうであれ、プロの世界は指名を拒否して入ってきた選手に対し、洗礼を浴びせるというか、「あいつだけには打たせない」という意識が働くものです。実力が拮抗している世界なので、相手に余計な力を出させることは決してプラスではありません。ここでも長野には、ほかの選手にはない壁が立ちはだかっています。
 今はパ・リーグでも暗いイメージはありません。もちろん待遇面でセ・リーグのチームに見劣りするわけでもありません。長野が拒否した2球団とも人気、実力とも球界では十分に存在感を示しています。本人の意思だけではなかったのかもしれませんが、二つ返事でプロの世界に飛び込んでほしかったと私は思っています。

diary2008/12/10

FA

 今年も複数の選手がフリーエージェント(FA)権を行使しましたね。チームの看板選手のメジャーリーグ、あるいは国内の他球団への移籍は珍しいことではなくなっています。

 今年から国内の移籍に限ってはFA権取得までの期間が短縮されました。そのため、当初は権利を得る予定がなかった選手までFA権を取得しました。しかも年俸が安い選手は移籍に伴っての保障もなくなり、どれだけ移籍が活発になるか、私も注目してみていました。
 しかし、多くの選手が権利を行使せず、横浜の三浦大輔投手などは行使してもチームに残留とどこか肩透かしを食った感じですね。やはり選手にとって現状を変えることには大きなエネルギーが要るのでしょう。中日からFA宣言した中村紀洋選手はポジションや契約年数にこだわりがあり、現状を変えるに値する理由があったようですが、彼ほど明確な理由がないと、なかなか移籍を決断できないのかもしれませんね。
 生え抜きで一筋にやってくれば愛着もわくし、指導者としての将来設計も描くことができます。一方、移籍すると環境が変わり、それまでと同じパフォーマンスを出せるかなどリスクも付きまといます。選手にも家族がいて生活があります。権利取得が早まったことで心の準備が十分でなかったことも移籍が活発化しなかった一因でしょうが、よほどの覚悟がなければFA宣言はできない側面もあったと思っています。

diary2008/12/06

賞の権威

 先週、恒例のプロ野球のコンベンションが行われました。各種タイトルやベストナインに輝いた選手らが表彰を受けていました。パ・リーグの最優秀選手(MVP)は岩隈(楽天)でしたね。確かに21勝は素晴らしい成績ですが、優勝チームから選ぶのが「暗黙の了解」だと思っていたので、この選出には驚きもありました。

 皆さんご存じのようにMVPやベストナインは記者の投票で決まります。マスコミの後ろにはファンがいて、記者の印象度はそのまま世間に与えたインパクトだと考えると、選出の手順は理にかなっていると思います。今回の岩隈の受賞についても20勝ではなく21勝という点が評価されたと解釈すれば、その授賞も十分にうなずけます。
 一方で疑問を感じる表彰があります。それはゴールデングラブ賞です。私はこの賞に関しては、純粋に守備の名手が選ばれるべきだと思っていますが、ベストナイン的な感覚で票を投じる傾向が見受けられます。守備の良しあしを見分けるのは難しいのでしょう。特にピッチャーは守備機会が少なく、どうしても投球そのものの評価に引きずられてしまう。われわれプロ経験者からみると、毎年のように首をかしげる人選があります。
 ベストナインとは明確に区別するためにも、メジャーリーグに倣って各チーム監督、コーチといった玄人が人選に携わるのも手ではないでしょうか。表彰はマスコミや記者、ファンだけではなく、現場の関係者も含めて誰もが納得できるものであってほしいものですね。それが賞の権威を高めることにつながると思っています。

diary2008/11/27

WBCコーチに就任

 先日、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本代表の総合コーチに任命されました。私は選手として一度も日の丸を背負う経験がなかったので、就任を要請された時には光栄に思うと同時に、身が引き締まる思いでした。
 日本代表クラスの選手になれば、今さら技術指導の必要はないと思っています。オリンピックと違ってメジャーリーグのチームに所属している選手も加わります。日本でプレーする選手は気後れすることがあるかもしれません。また、それが溝になることもあるかもしれません。そんなことがないように原監督の下、いかにチームとしてまとまれるか、その支援がコーチ陣の仕事と心得ています。
 個人的には以前から日本代表にも捕手部門のコーチが必要だと思っていました。捕手は大舞台で緊迫した試合になれば精神的に追い込まれると思います。未知の相手が実際に対戦すると事前に収集した情報と誤差があり、リード面でパニックになることもあり得ます。一つの配球の失敗に引きずられず、短期間で立て直していかなければなりません。だからこそ、捕手の精神面のケアを重視していきたいと思っています。
 WBCは短期間でチームとしてまとまる難しさはあります。前回優勝チームなので対戦国のマークも厳しくなるはずでしょう。2連覇は容易ではないですが、日本代表には間違いなくそれができる潜在能力があると思っています。あとは選手の力を最大限に引き出せるように手助けをしていきたいです。

diary2008/11/20

黄金時代の遺産

 西武が4年ぶりの日本一に輝きましたね。巨人相手に4勝3敗で最後も1点差試合でした。息詰まる好シリーズで勝敗を分けた要因にはいくつかあると思いますが、私はその一つに片岡の機動力を挙げたいと思います。
 第7戦の八回、西武の片岡易之選手は先頭で死球から出塁しました。1点を追っていました。貴重な走者です。セオリーならバントで手堅くというところでもありました。しかし、初球、片岡は迷わずスタートを切りました。タイミングは間一髪ながらこれで得点圏に進みました。
 おそらくノーサインの初球盗塁だったと思います。ベンチが失敗を恐れずにどんどん攻めろと背中を押してきた面があるとはいえ、普通なら慎重になってしまうところです。そこをあえて攻めた姿には驚かされました。
 第1戦、一回に先頭で出塁した片岡は巨人・上原浩治投手のけん制球に刺されています。片岡としては出ばなをくじかれ、スタートを切ることにちゅうちょが出てきても不思議ではなかったところです。だが、そこは現代っ子というべきなのでしょうか。逆に2年連続盗塁王のプライドに火が付いたように、一層盗塁を狙う姿勢は強くなっていました。最後の最後、勝負どころでもそれは変わらなかったように見えました。
 西武は今シーズン、豪快にホームランの力を中心に勝ってきました。でも、それだけではなかったことが改めてよく分かりました。片岡の走塁にはかつての黄金時代から脈々と受け継がれてきた西武の遺産のようなものも感じられましたね。

diary2008/11/10

ワールドシリーズ

 ワールドシリーズ解説の仕事を終えて日本に帰ってきました。メジャーの試合を生で見るのが初めてで、ただでさえ新鮮だったのですが、結末が史上初の雨天によるサスペンデッドゲームを経てのフィリーズの世界一で終わったりと、驚かされることが多かったですね。

 プレーで一番印象に残ったのは打球の速さですね。どの打者もバットのヘッドスピードが日本人に比べると数段速かったです。本塁打はあっという間にスタンドに届いていました。バットに当たった直後にはショートゴロ、セカンドゴロに見える当たりもスピンが利いているために、野手のグラブの先をかすめて抜けていっていました。岩村明憲選手が何でもないように見えるゴロを捕り切れずにエラーと判定される守備がありましたが、あれも打球の速さゆえに起こったように見えましたね。
 先発投手は2ストライクを取っても3球勝負にいっていました。背景には球数制限があると思います。日本だと2ストライクを取っても、3ボールまで使えると考え、慎重に攻めがちです。でも、メジャーでそれでは無駄に球数を費やしてしまいます。当然、遊び球の概念はありません。常に3球勝負でした。それでも、よく抑えていましたね。試合時間の短縮にもなるし、もっと日本でも広がっていい考え方だと感じました。
 日米の野球を比較すると、ほかにも多くの相違点がありました。誰もが感じることかもしれませんが、球場全体から野球が文化として根付いていることは確かに言えますね。

diary2008/11/01

初のメジャー

 ワールドシリーズ解説の仕事でアメリカに来ています。生で大リーグの試合を見るのは初めてのことなので、期待でわくわくしています。

 これまでもメジャーの試合の解説はありましたが、すべて日本のスタジオでのことでした。現場ではないので、どうしても画面からは伝わってこない部分がありました。それだけに、今回はそれらを自分の目や耳で確認したいと思っています。
 気になるのは何と言っても野球のレベルですね。メジャーは依然、世界最高峰のリーグには変わりないでしょうが、私たちの現役時代に比べて質が落ちたといわれています。果たしてそれが本当なのか。落ちているなら走攻守どの要素なのか。そして何が原因なのか。そこから日本の野球を分析し、どれほど距離が縮まったか、また何が足りないかも探ってみたいと思っています。
 本場のベースボールの雰囲気に触れるのも楽しみです。試合の演出の仕方、鳴り物がなくても楽しめるファン…。日本の球場とは違うことはテレビで見ていてもよく分かりますが、球団の営業担当者らにも話を聞いて、どんな努力をしているかも知りたいと思っています。
 出場する両チームの監督に話を聞く機会もありそうです。選手、監督として日本シリーズに出場してきた経験に照らし合わせながら、采配や心理に注目してみたいですね。また機会があれば、ここでもご報告したいと思います。それでは。

diary2008/10/23

正捕手の成長

 巨人が史上まれに見る大逆転でセ・リーグ優勝を飾りましたね。私はその一因には、阿部慎之助捕手の好リードがあったと思っています。それが端的に表れたのが、ともに同率首位で迎えた10月8日の阪神戦。巨人が三回に2点を先制した直後の守りでした。

 一死一、二塁で打席には金本知憲外野手を迎えます。前打席では内角球で遊ゴロに打ち取っていました。阿部はここでも初球、内海哲也投手に内角直球を要求しています。ボールにはなりましたが、これで金本の意識に強く内角を刷り込みました。
 効果はてきめんでした。その後は一切、内角には要求しませんでしたが、甘い球もあるのに金本は打ち損じていました。阿部はマスク越しにそんな金本の姿を冷静に洞察していたと思います。それは5球目から打ち取るまでの4球、すべて変化球を求めたところに表れていたと思います。
 1球、また1球。金本にしてみればいつかあの内角速球が来るのではという思いが深まっていく中、阿部は変化球を要求し続けています。

 最後もスライダーというよりはカーブでした。捕手は勝負球で緩い球を打たれると悔いが残るので選択に消極的になるところですが、金本のスイングを見ながら最後まで変化球が最善との確信があったように思います。きれいに空振りで三振を奪ったのですが、ここで二死を取ったことが振り返ると、この試合最大のポイントになっていました。
 阿部は大一番でこんなリードができるようになったのかと思います。北京五輪での経験も大きかったのかもしれません。巨人の正捕手の成長を実感すると同時に、これだけの存在なので彼の右肩負傷が巨人のクライマックスシリーズに突破にどう影響するかも心配です。

diary2008/10/15

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