伊東勤 TSUTOMU ITOH Official Website

diary

ビデオ判定について

 セ・リーグは8月から本塁打のビデオ判定を試験的に実施することを決めましたね。パ・リーグはビデオ判定に消極的です。プレー同様に、ミスがあるのも野球の醍醐味という声、審判員の権威が落ちるという意見もあるでしょう。しかし、それらを踏まえた上で、私は基本的にはビデオ判定導入に賛成したいと思っている1人です。
 誰もがそうでしょうが、選手、監督時代を通じて審判員の判定に疑問を持つことは少なくありませんでした。もちろん間違った判定に救われたこともあるのですが、人間は勝手なもので不利な判定の方が記憶に残っているものです。
 その点で私がユニホームを着ている時に最もよく覚えているのが、西武監督として指揮を執った2004年の中日との日本シリーズ第1戦です。ご記憶の方もいらっしゃるでしょうが、ある判定をめぐって49分間も中断し、審判団が誤審を認めてようやく再開されました。当時もこういう微妙なプレーにこそ映像の力を借りればいいと思いました。受け入れられませんでしたが、審判員に「映像をもう一度見てほしい」と要望もしました。
 日本シリーズなどのように外野の両翼に審判員を配する6人制でも防げない誤審もあります。2人少ない4人制ならなおさらです。中でもポール際の微妙な打球の判定というものは、球場が広くなって打球も飛ぶようになった現代の野球では、より難しくなっています。
 そのプレーが選手の今後の人生を左右することもあります。肉眼での限界を補う意味で、ビデオを限定的に活用していけば選手、審判員ともにハッピーではないでしょうか。

diary2009/07/26

中日のキーマン

 中日のキーマンは、やはり谷繁捕手だなと思う試合がありました。7月5日の巨人戦(ナゴヤドーム)でのことでした。中日は1点リードのまま終盤に入りました。七回は河原投手がマウンドへ。八、九回は浅尾、岩瀬両投手が控えるだけに、私は巨人の1番坂本内野手から始まるこの回がポイントだと思って見ていました。

 バッテリーは坂本内野手ら2者を仕留め、最も手ごわい3番の小笠原内野手を迎えました。とにかく本塁打だけは避けないといけないところです。谷繁捕手は細心の注意を払って外角への配球に徹していました。外に逃げていくシュート、その軌道から落ちるフォークボール…。並の捕手なら1球ぐらい内角を見せ球にしたいところでしょうが、そんな色気はみじんも見せませんでした。自信を持って外の出し入れで勝負しているように見えました。
 捕手の自信は河原投手にも伝わったのでしょう。谷繁捕手の配球を信頼し切って腕を振っているようでした。制球に乱れはなく、最後は外へのフォークで空振り三振を奪いました。バッテリーの信頼関係が可能にしたような打ち取り方でしたね。結局、中日は1点差で逃げ切るのですが、この場面で勝負ありにも見えました。
 私の記憶では、この試合で中日の投手が谷繁捕手のサインに首を振った場面は一度もありませんでした。河原投手だけではなく、ほかの投手をも信頼させる存在感があるということでしょう。谷繁捕手が故障で離脱したシーズン序盤に中日が苦しみ、復帰とともに調子を上げてきたという事実もうなずけます。中日は前半戦を8連勝で終えましたが、巨人を追う1番手のチームがこの勢いを持続できるかは、谷繁捕手の存在に懸かっている部分が大きいと思っています。

diary2009/07/23

一部の報道について

 本日、一部スポーツ新聞で、私の回りの関係者が来年からの阪神のコーチングスタッフ入りを画策しているという内容の報道がありました。ファンの方からこのホームページに頂いたメールにも、そのことについての質問などがありましたが、昨日まで私の元に何ら取材はなく、私はそのような事実を一切、関知しておりませんでした。ただただ驚き、戸惑うばかりです。

 私は今年、評論家として2年目を迎えました。先日も現地でメジャーリーグのオールスターゲームの解説をさせて頂きましたが、日米両球界をネット裏から学び、見識を深めるという充実した日々を送らせて頂いています。このように誤解を招くような報道は、私が今、お世話になっている報道機関など関係先の方々にも不信感を与えかねません。そして何より、シーズンを戦っている阪神タイガースの関係者の方々に迷惑を掛けることになります。ホームページをご覧頂いている皆さまにはそのことをお知らせ致したく、そして報道の方には何とぞ以上のこと、ご配慮頂くよう、よろしくお願い申し上げます。

diary2009/07/22

隔世の感あるオールスター

 今年もファン投票などでオールスターに出場する選手が決まりましたね。新聞で選ばれた選手のコメントを見ると、隔世の感があります。一様に喜びを表しているのですが、心に響くものが少ないからです。
 私が若手選手のころはオールスターは権威が高いもので、出場することは栄誉でした。だからファン投票選出は選手冥利に尽きるという意味合いだけではなく、その後の監督推薦だと、どう転ぶか分からないので、とにかくファン投票で先に出場を決めておきたいものでした。
 オールスターでは試合そのものからも学び、自信になることが多く、多少の故障を押しても出たいものでした。私が初出場した時、本当ならベンチの真ん中に座るべき立場ではないのだが、そこしか空いていなかったので座るしかなくなくなりました。しかし、そこで聞こえてくる一流選手の会話は刺激的で、勉強になったものです。
 当時、投手は手の内を隠して、決め球の変化球を他チームの捕手に投げないことが当たり前でした。そんな中でも日ごろ受ける機会がない一流の球を捕るのは新鮮でしたね。
 今の選手たちは日ごろから親密に交流しています。ペナントレースでは交流戦があり、WBCの日本代表でも、技術的なことを含めて情報交換が盛んに行われていました。オールスターの価値低下が叫ばれて久しいですが、選手同士が近くなり過ぎたことも私は一因だと思っています。

diary2009/07/05

原点は西武野球

 交流戦はソフトバンクの連覇で幕を閉じました。秋山監督が指揮を執る今季のソフトバンクの優勝は、王前監督が率いた昨季とは全く中身が違うと私は思っています。  秋山監督は走攻守に卓越したスター選手でした。個人技で数々の栄光も手にしました。しかし、対照的に監督として目指す野球は手堅く、チームを重視したものです。1点をしぶとく奪って、1点を必死に守る―。まさに彼が現役生活のピークを過ごした西武黄金期の野球が原点にあるように私には見えます。以前、秋山監督と話をしていてもそう思ったのですが、彼の頭の中には、我々とともに戦った野球が手本としてあるということです。
 秋山監督が目指す野球は開幕直後、うまくいかないこともありました。それでも、方針をぶれさせることなく、我慢強くその野球に徹していました。それが徐々に実を結びつつあり、交流戦で連覇という結果につながったのだとも思いました。
 現役時代に実績があった人ほど、監督になってもそのイメージにとらわれてしまう傾向があります。一方で現実には選手にその力がなく、笛吹けど踊らずという状況を招きやすいものです。しかし、秋山監督はそうはならず、組織的な強さを求めています。
 それは昨年まで指導者として過ごした時間が肥やしになっているからではないでしょうか。2軍監督を経験し、王監督の下ではコーチ陣をまとめる役割も果たしてきました。上に立つ者には何が必要か、よく学んできたからこそ、交流戦の優勝もあったと思っています。

diary2009/06/29

審判員も選手と同じ

 先日、解説の仕事で球場を訪れた時のことでした。メンバー交換の直前に、ベンチ脇の通路であるセ・リーグの審判の方から面白い話を聞きました。
 その方によると、球審を務めるときには投手と同じで、立ち上がりがポイントなのだということ。試合の序盤で、微妙なコースのストライク、ボールを的確に、そして一貫性を持って判定できると、そのリズムに乗って試合の最後までいい感じで判定できるそうなのです。
 逆に微妙なコースの球を打者がファウルにして自分の判定の機会を奪われると、リズムをつくれずに不安になるようです。きっちりと捕手が受けた投球を、できるだけ早く自分でコールしたいというのです。
 私はこの話を聞いて立ち上がりが重要という点では、バッテリーにも通じるところがあるなと思いましたね。投手は言うまでもないのですが、捕手もそうです。ブルペンから投手のその日の調子をつかみ、試合に入ってからは使える球種、使えない球種を判別していく―。この作業の迅速さが捕手の優劣を分けるからです。
 審判も、選手と同じなんだなと目からうろこが落ちたような気もしました。私も現役時代、監督時代と判定には疑問を持つこともありましたが、そんな視点から球審を見ていれば、実はそこに至る伏線が序盤にあったことに気付けたかもしれません。これから解説者を務めるとき、少なくとも立ち上がりの一回の裏表はバッテリーの出来、不出来以外に球審の判定にも注目しようと思いました。

diary2009/06/20

抑え投手の不足

 最近の日本球界を見て思うのですが、慢性的な抑え投手不足ですね。開幕から2カ月が過ぎましたが、いまだに抑えを確立できていないチームも少なくないです。
 WBCで日本代表は絶対的な抑えがおらず、最後はダルビッシュ投手(日本ハム)に託す苦肉の策になりました。岩瀬仁紀投手(中日)、藤川球児投手(阪神)ら、かつては打者を圧倒してきた守護神たちも、ピークを過ぎた感があります。日本では彼らに続くような抑えが育っておらず、このままでは4番打者と同じように外国人に頼る球団も増えてくるかもしれませんね。
 抑えは失敗が許されないポジションです。例えば球が速いとか、空振りを奪える変化球を持っているとか、投球スタイルの適性があると思います。そして何よりもメンタル面の強さがないと務まらない役割です。しかし、現状では先発の力がなかった投手が抑えに回る傾向にあります。ただでさえ育つのに時間がかかるのに、計画的に育てていないものですから抑え不足の現状を招くのも当然といえるのではないでしょうか。
 解決策の一つはアマチュアもプロ並みの分業制を導入することが挙げられるでしょうか。アマの指導者が選手に先発とは違った心身の調整方法を指導する。そして連投で酷使などせず、登板間隔を保つようにする。プロ入り時に故障持ちの救援専門投手が少なくないからです。こうすることによってアマから抑えのスペシャリストを養成することができると思います。
 選手にとっても、専門性を高めることで、プロに入ってこられる確率も上げられるでしょう。次のWBCで絶対的な抑えを確立するためにも、プロアマ一体となって取り組むのも手だと思っています。

diary2009/06/13

ブレークのきっかけ

 プロ野球の世界では、選手の多くが近いレベルでひしめき合っています。何か一つきっかけがあれば、選手は飛躍するものです。そして、そのきっかけが複数あるなら、その確率は高いのは当然です。今季の大竹(広島)がいい例ですね。
 プロ入り時から大器と言われ、特に黒田博樹投手(ドジャース)が抜けた昨季はエースの期待が高かったです。しかし、素直過ぎるところがあるのか、肝心なところで制球を乱していました。
 それが8年目の今季は違いますね。開設の仕事で、5月25日の西武戦を実際に見ましたが、シュート、シュートで右打者の胸元を大胆に攻める姿がありました。ピンチでこそどんどん内角を突いていました。もちろん石原捕手の配球ですが、それが有効と捕手に思わせるだけの制球力がシュートに備わっているということです。
 これまで持ち球はスライダー、シュートと球速が近かったが、今季はチェンジアップを完ぺきにマスターしたことで投球の幅が広がったこともあるでしょう。前田健太投手という生きのいい投手の台頭が刺激になり、さらに新球場で広くなった本拠地が味方になっていることは言うまでもありません。
 最近ではここまでブレークに時間を要した投手は、私の記憶にはありません。ただ、助走が長かった分、飛躍の距離も長いのかもしれません。43回無失点を続けた右腕を見ていて、そんなことを思いましたね。

diary2009/06/08

1年目監督の難しさ

 阪神が低迷していますね。今季から新たに指揮を執っている真弓明信監督は阪神OBですが、近ごろ多くなった2軍監督やヘッドコーチからの内部昇格ではなく、外部から来た監督です。

 真弓監督は昨年まで評論家として阪神の試合を数多く見てきました。岡田彰布前監督時代は「JFK」という強力なリリーフ陣に頼りすぎた面があり、ネット裏から先発陣強化の必要性を感じていたそうです。私は今年、阪神の試合をかなり見る機会が多いのですが、開幕から多少、継投が遅れたとしても先発投手を引っ張る傾向にありました。それは真弓監督があえて前監督のカラーを消そうとしているようにも見えるほどでした。
 これは長い目で見ると必要な改革だったとは思います。しかし、真弓監督自身もそうは思っていても、ベンチで指揮を執るとどうしても目先の勝敗に追われるものです。我慢の継投で失敗が続くと、一転、早めの投手リレーになっていたりもしました。阪神は今や、毎年のように優勝争いする球団になり、結果をすぐに求められる環境で采配を振るっているだけに、当初の信念を貫きづらいのかもしれませんね。
 私は幸運にも監督就任1年目で日本一という栄冠に恵まれました。監督に就任する前年は、選手兼コーチで、チーム内のことを把握しやすかったというのは大きかったです。前任者の色を消すなどとは考えず、とにかく今勝つために何が必要かということだけに集中できたように思います。真弓監督を見ていると、外部から来た監督の1年目の難しさというもの感じずにはいられません。

diary2009/05/31

投手の基本

 外角低めは投手の制球の基本と言われます。5月15日の中日と横浜の一戦で、それをあらためて感じさせられた場面がありました。
 中日の吉見一起投手は横浜の三浦大輔と投手戦を演じて0―0の十回一死、4番の村田修一選手を迎えました。1、2球目は谷繁元信捕手が構えたミットに、糸を引くように外角低めに投げ込んで見逃し、ファウルであっという間に追い込みました。どちらの球も安打にするのは難しい球でしたね。
 3球目は顔付近の直球でインコースを意識させます。これで十分に伏線を張って4球目。私はオーソドックスに外角のスライダーかフォークボールかと思っていましたが、1、2球目と全く同じ外角低めへの直球で二ゴロに仕留めました。結局、村田選手に対し、中日バッテリーはすべて直球でした。1球見せ球を使っただけで、緩急も使いませんでした。しかも打ち取るのにわずか4球しか必要としませんでした。
 確かに普通なら最後は変化球かというところに、直球を持ってきた谷繁選手の裏をかいたようなリードは光っていました。ただ、WBCでも中軸だった打者を手玉に取ることができたのは、打者の目から最も遠い外角低めへの直球の制球力が申し分なかったことが最大の要因でした。こういう場面でこんなふうにコントロールできるのですから、ずっと磨きを掛けてきた賜物であることも十分に伝わってきました。
 中日はその裏の攻撃でサヨナラ勝ちを収めています。相手の主砲を寄せ付けなかった吉見投手の基本といえるコースへの制球力が、攻撃のリズムをつくったと言っても過言ではないでしょう。

diary2009/05/24

  1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  

伊東勤 TSUTOMU ITOH SPONSORS

平成立石病院 TAKAO 株式会社シビルウェブ 有限会社タイガーコーポレーション
Go Go Price